治験とは

治験=治療試験は、国から薬としての承認を受けるために行う、新薬開発における最終段階の試験の事です。
開発した薬が正式に市販薬や医薬品と認められるには、安全性や有効性を証明するデータを取る必要があり、厚生労働省に承認してもらう必要があります。
日常生活で頻繁に使用されている「風邪薬」、「胃薬」、「傷薬」など、全ての薬は治験という最終関門を通し、市販されています。
人体への試験は新薬の製造過程で最終段階ですので、有効性や安全性はすでに動物試験や科学試験を通して実証済みです。
しかし、新薬というものは簡単に承認されるものではなく、多数の被験者のデータを取らなくてはいけません。
現に、基礎研究から製造承認を経て一つの薬が世に出るまでには10~18年という長い年月を必要とします。

薬の先進国であるアメリカが、日本の10倍もの速さで薬の承認をしている事実からも、日本人の治験に対する認識や認知度の低い事が挙げられます。
治験が進まないことで、最先端医療(海外で流通している新薬など)の承認が遅れるという事態につながってしまいます。
「欧米で使用されている薬が使用できれば、今の日本にある薬よりも簡単に治せるのに…」といった事が、日本では実際に起こっているのが現状なのです。
こうした事態を受けて厚生労働省は、患者の治験参加を支援するための仕組みを整え、現在平均で4年を要する治験の迅速化を目指し、「大規模治験ネットワーク」といった医療機関の整備に取り組んでいます。
治験参加前には必ず専門医師からの説明があり、それを受けた上で参加・不参加を決める事ができます。

治験参加のメリット

  • 謝礼金を得られる(製薬企業から有償ボランティア金として支給されます。)
  • 治験に関連する薬と検査代が無料。(製薬企業が全て負担します)
  • 治験に参加することで生じる自己負担(診察費)が発生しない。(製薬企業が全て負担します)
  • 最先端の医療を受ける機会を得られる。
  • 経験豊富な専門医師による診察を受ける事ができ、通常診療より丁寧な診察や詳細な検査を受けることにより、自分の体の状態を正確に知ることができます。
  • 社会貢献(薬を必要としている人や次世代の人達の為に、効果的で安心な薬を開発することに貢献できます。)

新薬誕生までの過程

  1. 基礎研究:
    研究者や科学者により多くの化合物の中から薬の元となる成分を探す研究が行われています。
    薬の開発は、植物や化学物質、微生物などの中から、薬となる可能性がある物質(成分)を発見するなど、化学的に作り出す研究から始まります。
  2. 非臨床試験、動物実験・科学実験:
    薬として可能性のある物質を対象に、動物(ウサギ、イヌ、ネズミなど)や培養細胞を用いて安全性や有効性について調べます。
  3. 臨床試験・治験:
    「非臨床試験」の段階で安全性・有効性ともにパスした薬(治験薬という)について、実際に人が使っても安全で有効性があるかどうかを調べていく最終的な確認作業。この臨床試験の段階が「治験」にあたります。
    治験はさらに3段階にわかれ、それぞれ参加者の同意を得た上で

    • 第一相試験:少数の健康な成人を対象に主に安全性について確認する。
    • 第二相試験:少数の患者を対象に、有効で安全な投薬量や投薬方法について確認する。
    • 第三相試験:多数の患者を対象に、有効性と安全性について既存薬との比較を行う。
  4. 審査・承認
    製薬企業は治験で安全性や有効性などが証明された治験薬を、厚生労働省に製造承認の申請を行います。
    数段階の審査を受け、その治験成績が有益なものであると評価・承認された薬は、初めて「薬」として市場に出ることになります。
    なお、「基礎研究」段階で新薬候補とされた物質(化合物)の内、製造承認を得ることができるものは、わずか1万分の1程度であるとされています。
  5. 認可後の評価
    販売後も薬は様々な評価を受けます。
    病院などの医療機関で更に多くの患者に投与された結果を元に、開発段階では発見できなかった有効性や適正使用情報などの収集が行われます。